価格はなぜこの水準なのか
端的にいえば、支払われているのは生地代ではなく時間です。 作家ベアの価格の大半は一人の人間の時間であり、それは短縮できません。
素材ではなく、時間
生地、糸、詰め物、金具は目に見える費用ですが、主たる部分ではありません。 大きいのは作業です。型紙を起こし、裁ち、縫い、詰め、顔を出し、衣装を仕立て、刺繍する。 一体につき数日から数週間。価格をその時間で割ってみると、時給は控えめだとわかります。
いちばん高くつくのは刺繍
衣装の一つひとつの要素が針で入ります。ボンネットの鳥、裾のうさぎ、 ニットに縫い込まれた言葉、ポケットの小さなハート。一着に数十。 これは印刷でも、一分で縫い付けられる既製のワッペンでもありません。 近くで見なければわからない時間です。それが 150 ユーロの作品と 600 ユーロの作品を分けます。
一点しかないということ
工場は型紙の開発費を数千個に分散できます。作家は一体に負います。 単価が本質的に高くなるのは、上乗せではなく算数です。
価格の幅を決めるもの
- 大きさ。素材も工程も増えます。
- 刺繍の量。最大の係数です。
- 衣装。一着だけか、靴と帽子まで揃った一式か。
- 連れの人形。付属する小さな友だちは、実質もう一体分の仕事です。
値段を時間に置きかえると
工程ごとに分けて見ると、数字の意味がわかりやすくなります。おおよその目安です。
- 型紙と裁断——その子の姿がすでに決まっていれば数時間。 新しい型紙を起こし、何度も直すなら数日。
- 縫製と詰め——一日から二日。木毛は少しずつ、固く詰めます。 この固さで、姿勢を保てるか、へたってしまうかが決まります。
- 顔——胴体ぜんぶと同じくらいの時間。ここはミリの世界で、 目の位置が1.5ミリずれるだけで表情が別のものになります。
- 衣装——たいていベア本体より長くかかります。
- 刺繍——すべてを何倍にもする工程。ポケットの小さな情景ひとつで 一晩、衣装一式には数十の図柄が入ることもあります。
幅が生まれるのはここです。刺繍のないベアと、全面に刺繍の入った衣装をまとうベアの差は、 素材ではなく、何週間分の手の差です。
作家によって値段が違うのはなぜか
見比べはじめると必ず出てくる疑問です。理由は三つあり、 そのうち出来の良し悪しに関わるのは一つだけです。
- 仕事の量。比べられるのは同じ条件のものだけです。 刺繍入りの衣装と連れの人形がつくベアは、実質三点分です。
- 作家の知られ方。すでに集められている作家の作品は、 同じ手間でも高くなります。名前への上乗せではなく、順番待ちです。 ほしい人の数に対して、作品の数が足りません。
- その作家の段階。始めたばかりの作り手は意識して価格を抑えます。 最初の持ち主が必要だからです。「早いうちに求める」という言い習わしは、ここから来ています。
価格帯ごとの目安
当工房に限らず、作家ベア市場全体のおおよその見取り図です。
- 150ユーロまで。8〜15cm の小さな子、簡素な衣装。 この世界が自分に合うかを確かめるのに向いています。
- 150〜500ユーロ。中くらいの大きさ、考え抜かれた衣装、 刺繍が入ることも。実際にいちばん多く迎えられている価格帯です。
- 500〜1500ユーロ。大きな一体か、小さくても手刺繍が多く、 連れの人形がつくもの。棚の中心になる子です。
- それ以上。名前と展示歴のある作家の作品。
これ以上安くならない理由
安くはできます。ただしそれは別のものになります。手刺繍の代わりにプリント、 自分の型紙の代わりに既製の型紙、一点物の代わりに量産。 どの近道も価格を下げ、同じだけ、作家ベアに求められているものを削ります。
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